2016年01月29日

井上靖「後白河院」

最近また井上靖の「後白河院」を再読しました。

後白河院を取り巻く4人の人物のそれぞれの視点から物語は展開されます。この時代の歴史的な知識がある程度ないとわかりにくい部分もあるので、 4人の語り部がどのような人物であったかは先に調べておいたほうが良いでしょう。

一部は平信範、第2部が建春門院中納言、第3部が吉田経房、第4部が九条兼実、ということになっています。皆それぞれ当時後白河院の側近にいた人物で この手法はなかなか斬新な小説作法と言えると思います。

最近のエンターテイメント性が優先した小説を読みなれた方には、 難解で面白くないと思われるかもしれませんが、改めて読んでみるとこの小説の素晴らしさを再認識しました。注解が114項目もあるという小説も異色です。この注解が無いとかなりの部分わからない用語や項目、事件などがあって、 自分で調べなくてはならなくなると思うので、この注解は助かります。この注解なしですべてが理解できて読み進められる人は、相当な歴史的知識のある人だと思います。

井上靖氏のような大作家と言われる人の作品は、さすがに格調高く味わい深いものがあります。 氏の文体というのはいつもそうですが、淡々と語られて、純文学でも私小説系の人によくある安っぽい装飾的な表現などはありません。しかし、それゆえ味わい深いのです。 読み進むほどに源頼朝をして「日本一の大天狗」と言わしめた後白河院の人物像が鮮明に浮かび上がってきます。これを読んで大河ドラマを見るとまた面白いと思います。

そのモンスター的傑物であった後白河院をして、院の命を受けて鎌倉にいる頼朝に会いに行った中原康定という人物が頼朝を評して「人品骨柄卑しからぬ偉丈夫」と院に伝えると、院は「狐にしても大狐」だなと言わしめた「源頼朝」という人物も やはり傑物であったのだなぁ・・・と、改めて感心してしまいます。

事実この時院は、頼朝という人物が木曾義仲や源行家などと違い簡単には籠絡できない人物ということを見抜いていたようです。このように後白河院は人を見抜く力も抜きん出ていたような気がします。京都の神護寺にある頼朝の肖像画を見ると、確かに意志が強く、頭脳明晰、それでいて気品のある頼朝の顔が見事に表現されていると思います。 最近、この肖像画は足利直義像との説もありますが、頼朝ファンの筆者としては頼朝像と思いたいです。(^-^;)

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ラベル:井上靖 後白河院
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2015年08月05日

家族という病

下重暁子さんという、元NHKのアナウンサーをされていた人が面白い本を出されましたね。まだ、管理人は読んではいませんが、新聞に書いてあった小見出しだけ読んでもなかなか面白いなと思いました。確かに日本では「家族」というのはある意味まっとう?な生き方をしている人の幻想のような気もします。まっとうな家族と暮らすのが正しい生き方・・・・みたいな風潮、人間いろいろな生き方があっても良いと思いますがいかかでしょうか・・・・

posted by ニャン吉 at 10:34| Comment(0) | ブックレビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年10月23日

二流の人・・・坂口安吾

つい先日、坂口安吾の「二流の人」を読みました。

今NHKでやっている大河ドラマにピッタリマッチング。黒田官兵衛(のちに如水と改名)が主役ではあるんですが、官兵衛を取り巻く戦国の著名人のことが安吾独自の解釈で描かれていてとても興味深く読めました。ただ、坂口安吾という人。自分で独自の安吾言葉というか、ちょっと難しい単語が出てくるので、読みにくいという点はありますが、中身はなかなか面白かったです。

なんといっても安吾の「徳川家康」観は本当に的を得ているかなと思いました。この「二流の人」の後に徳川家康というタイトルの家康に焦点を絞った作品もありますが、家康という人物像も一般的なイメージとはちょっと違った評価をしています。家康といえば狸おやじとか言われて、表面上と心の中はまるで違うように書かれているものが多いですが、安吾によれば、家康ほと実直で義理堅い武将は当時としては珍しく、当時は黒田官兵衛のような策士が評価された時代、この時代にあって信長にも秀吉にも裏切りの行為は起こさなかった。と言う事を言っていますが、これをいうと「じっと忍耐強く自分が台頭できる時期を待っていたのだ」という解釈が多いですが、安吾によれば、本心から裏切りなどの行為は良くないと思っていたのだと言っています。

しかも家康という人は非常に小心者で、自分が三成に襲撃されるかもしれないということを聞いたりした時も顔色が変わり、言葉も出なくなるという挙動だったようですが、家康のすごい所はこういう場面があっても、根底にはいつ死んでも良いという深い所でも覚悟があった人なので、落ち着いてそのことを吟味し土壇場になると腹が据わって、とてつもないことができる人だったようです。

このようにこの時代の戦国武将についてのユニークな評価はとても面白く楽しく読めました。多少の文章の読み難さはありますが、なかなか楽しめる作品でした。歴史が好きな人にはおすすめの1冊です。
posted by ニャン吉 at 21:51| Comment(0) | ブックレビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする